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俺の名前はシオン
人は皆俺の事をこう呼ぶ。
───「「勇者」」と。
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「ついにきたな魔王城」
俺は今魔王を討伐するために魔王城の目の前にいる。
ぶっちゃけた話だけど俺は魔王討伐には乗り気ではない
なぜかって?
理由は簡単
よくある絵本の物語では魔王は人間を支配して恐怖と絶望を植え付ける悪者って書かれてるだろ?
勿論俺たちの世界の絵本にも魔王は悪者と書かれているよ
だけど俺が今から戦う魔王は不思議なんだ。
何が不思議かって?
それはね───
人間を襲わないんだ。
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勿論魔王がこの世界に来てから魔物の数は圧倒的に増えた
それは認めざるおえない事実だ。
だけど魔王が自ら軍を率いて何処かしらの村や国を滅ぼしたって話を俺は未だかつて一度も聞いたことがないんだ。
理由はどうであれそんな人を襲わない魔王を無理に刺激して倒そうとはしたくな
い。
まあ本音を言えば魔王とやり合えばこっちもただでは済まないからってのは内緒のお話
たださ、俺は仮にも勇者だからさ
とうとうきてしまったんだよ。
国王からの魔王討伐の命令。
少なからず魔王のせいで魔物が増えすぎているから仕方のない決断なんだろうけど
そんなこんなで俺は今魔王城の前にいる
やる気はないけども。
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「よし!仕方ないやるか」
いやいや俺はやるしかないと決意し自分に喝を入れるため自分の頰を両手の手のひらでパンパンと叩き、魔王城内へと潜入した
魔王城内へと潜入した矢先、早速魔物の姿を発見した
「ゴォオオオオ!」
岩に包まれた身長凡そ3メートルはあるだろうと思われるゴーレムのご登場だ
「ごめんね!ちょっと通してもらうよ!」
俺は自分の腰に装備している
【聖剣 カラドボルグ】を鞘から抜き構える
「魔王戦を前に魔力はある程度残していたい。だから出来るだけ早く終わらせてもらうよ。」
魔物にはそれぞれ核と呼ばれる弱点が存在している
この世界はどんなに強い魔物であってもその核を壊せば消滅してしまい
ドロップアイテム、言わばその魔物に勝った報酬みたいなものに変わるような仕組みになっている。
何故だかは俺にも分からないがね。
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「スキル急所感知」
俺は自身が持つスキル急所感知を行使した
このスキルは名前の通り
何処が弱点かが目で見えるようになるスキルだ
レベルの高い高ランクの魔物などには効果はないがゴーレムクラスの中級モンスターなら効果はある。
「───よし。見つけた」
ゴーレムの核を見つけた俺はその弱点目掛けて聖剣カラドボルグを突き立てる
時間にして凡そ3秒ほど
決着の瞬間だ
「ゴオオオオオ!!!」
俺の一撃を受け核を壊されたゴーレムは悲鳴をあげ呆気なく倒れた
「ふぅ。さて先を急ぐか」
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魔王と思われる気配はどうやらこの城のてっぺんから感じる
おそらく奴はそこにいるんだろう
俺はそこに急ぐことにした
道中に多種様々な魔物が出現したが一応俺も勇者なんでね難なく倒せた。
そしてとうとう俺は魔王がいると思われし部屋の前に辿り着いた。
扉越しから止めどなく溢れ出る魔王の魔力に対してちょっと萎縮するがやむ終えない
やらないと帰れないわけだし
俺は意を決して扉をあけて部屋の中に侵入した
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「よく来たのう...勇者よ。」
部屋の最奥部にカーテンのようなのれんが張ってありそののれんの向こう側から声が聞こえた。
間違いないこいつが魔王だ
言葉を放っただけで分かるこいつの力量
これは強い。
今までの魔物達とでは比べ物にならない程の魔力に足を一歩踏み出せば押し潰されそうなほどの威圧感。
「姿を見せたらどうだ魔王
まさか俺が怖くて布越しからしか話せないって訳じゃないだろ?」
俺は軽く挑発するかのように魔王に言い放つ
これは俺の戦略の一つでもある行為だ
相手の怒りを駆り立て冷静さをかく
それが俺の狙いだ
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「ふっ、そんなやすい挑発にわしが乗るとでも思ったのか?」
さすがは魔王だな。
こんなチンケな挑発じゃ奴の怒りを買うこともできないか。
「まあよかろう。ここまでたどり着いた褒美だ。わしの姿存分に見るがよい」
魔王が立ち上がりカーテンをかき分け姿を見せようとした
その瞬間に俺は構えた。
体中の全ての神経を逆立てて戦闘体制へと移行する。
「さあ、始めようぜ魔王。
───最終決戦ってやつを。」
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聖剣カラドボルグの柄を右手で軽く握りその時を待つ。
そしてようやく
魔王はカーテンをかき分け俺の目の前に姿を見せた
だが、姿を見せたその魔王の風貌に俺は戸惑いを隠せずにいた。
「は....はぁあ!?」
その魔王は俺が想像していた姿とは全く別の姿をしていた
「よ、幼女!?」
褐色の肌に手ですけば指の間からするりと逃げ落ちそうなほどにサラサラした黒髪のロングヘアーに
大きく目を合わせればいずれ吸い込まれそうになる程やわらかな綺麗な黒い瞳。
それに黒のワンピースを着ていて
それはそれは立派な可愛らしい幼 女だった。
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「ふん。失礼なやつじゃな
わしを幼女ごときと一緒にしおって」
魔王はちょっと怒り気味で言葉を述べた
だが、これはうん。
どっからどう見ても幼女だ!
しかも、ただの幼女ではない
褐色娘。いい感じにこんがり焼けた肌に黒髪のロングヘアーがよく似合う
これはあれだ
「可愛い」
つい無意識のうちに思わず心の声が出てしまう
「あ、すまんつい本音が──」
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「な、な、な!か、かわいいじゃと!? ふ、ふざけるな!」
魔王をよく見ると魔王は頰を赤く染め
何やら照れているようだ
ますます可愛い。
「ほ、本題じゃ!貴様はわしを倒しに来たのだろう!? ならば勝負じゃ!」
「あ、そうだったな」
魔王の意外な姿に困惑していたが
俺がここに来た理由を思い出した
だが、正直戦いたくない。
なぜかって?
だって幼女だぞ!?
しかもこんな可愛い美幼女滅多にいない
1000年...いや、1億年に1人の逸材だ!
何なら俺がこれから先大人になるまで養ってやりたいくらいだ。
「おい貴様、さっさと勝負を終わらせるぞ!わしは早く終わらせてお菓子を食べたいのじゃ」
「ブフっ!」
俺はあまりの可愛さに吹き出して笑ってしまった