小説投稿板@キャスフィ
モブはモブらしく陰で勇者を支えます。
32コメント 2023/02/11(土) 20:09
  • 11    2022/08/22(月) 21:04:02  [通報
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    3 別れの前の最後のひと時。


    スキル授与の日から2週間が経った。
    勇者になった彼女はというと大忙しだ。


    明日、彼女は勇者になるための剣の技術や戦闘を学ぶため王都グリムガルドへ旅立つ。
    その準備で忙しいのか俺はあのスキル授与の日以来彼女とは会えていない。
    これが一生の別れという事ではないだろうが、恐らく何年もの間会えなくなる。
    それは彼女が勇者に選ばれたのだから仕方ない事だ。
    もう俺とは住む世界が違うからな。

    「明日で行っちまうのか。」

    彼女と出会った10年前から俺たちはずっと一緒にいた。
    だけどそれも今日で終わり。
    明日からは1人で過ごしていかなければならない。
    彼女はきっと立派な勇者となってこの世界を救うだろう。
    だから俺はしょぼくれずに彼女を応援してやらないといけない。
    そんな事を1人村の近くの草原に座り考えていたら──。


    「あー!グレンやっと見つけた!!町にどこにも居ないから探したよー!」

    突然後ろから聞こえた聞き慣れた声。

    「じゃじゃーん!見て!仮入団する騎士団の正装の鎧!かっこいいでしょー」

    振り向くとそこには彼女が居た。
    純白の傷一つない鎧に身を包んだ彼女はその鎧を自慢するように俺に向かい胸を張り威張っていた。

    「似合ってねーなあ」

    そんな彼女に向かって俺はそう言う。
    本当はとても似合っている。が、照れ臭くて素直に褒めてやれない。
    でも鎧に身を包む彼女を見て本当にこいつは勇者になったんだなと改めて実感した。
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