小説投稿板@キャスフィ
モブはモブらしく陰で勇者を支えます。
32コメント 2023/02/11(土) 20:09
  • 29    2022/08/22(月) 21:23:42  [通報
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    「何で・・・」

    何で俺には力がないんだろうと心に嘆いた。
    君の隣にいたくて君の影を追いかけて・・俺は自分なりに努力してきたはずだ。
    毎日腕立てもして腕力も磨いた。
    毎日走り込んでスタミナもつけた。
    棒を振るって技術も磨いた。
    君に追いつくために死に物狂いで努力した。
    だが、現実は虚しくそれほどまで努力し続けた結果が今のこの死にそうになっている自分だ。
    君に追いつきたくても追いつけない。
    君は俺より先へとどんどん突き進んでいくのに何で俺はこんな所で立ち止まっているんだろう。
    だけどそう悲観してもボアウルフ達の勢いが止まることはなかった。

    「ガウッ!!!」

    君の隣に居れるようなそんな力は俺にはないのだと、その現実を思い知らせるかのようにボアウルフ達はただひたすらに俺の体を噛みちぎる。

    「俺は・・・弱いな。」

    もうここで死ぬのだと自然に死を受け入れてしまった。
    次第に俺の視界はかすみ始め体の自由が効かなくなる。
    体が動かない。ボアウルフに噛みつかれた体中が痛い。
    傷口からは血が止めどなく溢れ出る。
    死に向かって行く自分の薄れゆく意識の中に走馬灯なのか、ポツンと彼女の姿が思い浮かんだ。

    「ははは。もう一回会いたかったな。」

    あの日以来、遠くへ行った君に最後に一度だけでいいから会いたかった。
    俺の気持ちを・・・伝えたかった。
    俺は彼女のことを思い浮かべながらゆっくりと目を閉じた。
    さよならだなエリス。
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