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運命なんて、くそくらえ
2コメント 2023/05/15(月) 11:21

  • 1  乙上 蓮鈴(おとがみ はすず)  2023/05/15(月) 10:49:00  [通報
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    現代日本風ローファンタジー。

    特別な妹、瑠莉(るり)の姉として生きてきた芙梔瑪(ふしめ)
    ある日彼女は妹を庇って車に轢かれてしまう。
    意識のまま漂流した彼女が邂逅のは何処かの世界で暮らす誰か。
    それによって自分が、姉妹格差からの溺愛を描く恋愛ライトノベル『吸血鬼と惹かれ合う運命(さだめ)〜私の血は蜜の華〜』の主人公であり、妹こそがその作品に出てくる悪女だと知ってしまう。
    このまま事故で記憶を失い、妹が悪女になっていくのを見過ごしさえすれば、自分を『運命の華嫁』として溺愛してくるハイスペック男性と出会い、面倒な障害を乗り越えながらもやがては幸せに暮らすらしい。
    「そんなの、冗談じゃない」
    溺愛という名の飼い殺しなんぞ嬉しくもない。
    何より最愛の妹を悪女だなどと嘲笑われてたまるものかと。
    妹の為、未来を変える為に動き出す。
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  • 2  乙上 蓮鈴(おとがみ はすず)  2023/05/15(月) 11:21:30  [通報
    返信 削除
     私の妹、吾妻(あずま) 瑠莉(るり)は特別だった。

     ふんわりとした亜麻色の髪に、光の角度によって青にも緑にも見える不思議な色の瞳。
    日に焼ける事を知らない肌に、小さな果実のような桃色の唇がよく映える。
    大きな目を縁取るのは髪よりもやや色の薄い睫毛で、ふわりと広がるその長さは見惚れてしまう程。
    ふっくらした頬と広い額は何処か幼気で、ツンと高い鼻は上品な形をキープしている。
    誰もが可愛がりたくなる可憐な顔立ちに、華奢ながら少女らしい丸みの有る身体。
    異国人だったという母方の祖母の血が色濃く出た、異国人形のような愛らしい外見に、甘え上手な性格。
    そして何より、吸血鬼の『華嫁』として見初められた事。
    我が家のような一般的な中流家庭に産まれたのが不思議な、産まれついての『お姫様』が、瑠莉だった。

     だから私は、何時でも何処でも誰にとっても『瑠莉ちゃんのお姉ちゃん』だった。
    父母譲りの黒髪黒目で痩せ型の私は、どうしたって妹の影に隠れるような印象しか無くて。
    瑠莉を華嫁とした吸血鬼は勿論、学校の友達に、ご近所さんに、両親にとってすらも。
    けれどそれを悲観した事は無い。
    妹を羨んだ事も嫌った事も無かった。
    そう、一度だって無いのだ。
    妹を突き飛ばして、代わりに車にぶつかった今だって。

     身体中が痛くて、何時まで経っても血の匂いと味がする。
    きっと口や鼻の中が切れたんだろうな、なんて何処か冷静に考えていた。
    友達の悲鳴が聞こえて、通行人が救急車やら警察に電話する声が聞こえて、近所のおじさんの怒声が聞こえる。
    だけどそれらが、少しずつ遠のいていく。

    霞む視界で必死に瑠莉を探せば、突き飛ばした先の位置で立ち尽くしていた。
    結構強く突き飛ばしてしまったのだけれど、転んだりしなかったようで何よりだ。
    大きな目が更に見開かれて、口元は先程まで浮かべていた表情のまま、端だけが引き攣るように震えている。

     嗚呼、これはもう少しで泣き出してしまうなと、必死に腕を動かそうとするも、身体は言う事を聞いてくれなくて。
    撫でて慰めてやる事が出来なくても、せめて大丈夫だと伝えようとしても、口すら動かない。
    笑ってあげる事も出来ない悔しさに、私の方が涙が零れてくる始末。

     涙で視界が歪み、立ち尽くす瑠莉の姿が見えなくなっていく。
    もしもこれが最期なら、せめて瑠莉の姿を見ながら逝きたいのに。
    手足の先の感覚が無くなっていくにつれて、視界は更に狭まっていく。

     意識が途切れるその瞬間まで、なんとか開き続けた目に焼き付けたのは、歪んだ視界の中、美しい妹の引き攣った笑みだった。
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