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「普通の人間」
俺は昔から普通じゃなかった。何をやっても
「◌◌くんは皆よりも行動が少し遅いです」
「◌◌くんは整理整頓が出来ていません」
と言われた。
小学生になってからも、担任からは同じことを言われるばかり。次第に友達も離れていった。俺は独りになった。
俺に向けられる冷たい視線、障害者じゃないかと疑う担任。
おまけに俺は勉強も出来ずにただの馬鹿。
親も日に日に喧嘩をする様になっていった。母は包丁を振り回し、父は俺を壁に叩き付けた。
そして全てどうでもよくなった。今よければいいのだ。生きてさえいれば、何時かきっと何かが起こる。そう信じて。
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「脳天に広がる幸せ」
両耳にしっとりとしたゴムの部分が当たる、そして入る。
私の幸せが体の血液と混じり合って共に流れて行く。胸に、心臓に響き渡る幸せのリズム。
背中に吹き当たる風がとても心地よく。
頭に広大な青空が広がる。世界が出来上がる。
全てを忘れ、全てを受け入れる。
心踊らせ、体も踊る。
私の幸せの一時。
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「高鳴る胸の響き」
貴方が今聞いている音は何ですか?
テレビの音ですか?それとも笑い声ですか?
私は何も聞こえません。目の前で誰かが笑っています。だけどどうして笑っているのかはわかりません。
生まれつき耳が聞こえない私は毎日苦労します。テレビを見ることは出来ても、音が聞こえないので、字幕で見ています。
ですが、何が面白いんでしょうか。音が聞こえたら面白いのかな、と思う事もたくさんあります。
3歳で手話を覚えさせられ、5歳で両親 から捨てられ。
友達も居ません。
私が唯一好きなことと言えば読書です。
胸の奥底でなにかが鳴っている。
私のこころはこんなにも鳴っているのに、どうして何も聞こえないの。
永遠に聞くことが叶わない音は、私を苦しめる。
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※実話
「こんな人生なら死んだ方が楽」
震えた声でそう言った。
「どんな死に方?」
腕を組んで考える。
「窒息じゃない?意識を失えばすっと、だよ」
「じゃあ殺してやるよ」
首を絞めてきた。
「どうだ?苦しいか?」
俺は一瞬戸惑ったものの、直ぐに受け入れた。
このまま死ねるのなら死のうと。
だがその気持ちは直ぐに消えることとなった。
襲い来る吐き気と不安感、溢れる冷や汗
だんだんと視界がぼやけてくる、それと同時に
死にたくないという言葉が頭を巡る。
俺は首を掴む腕を掴み返した。
「どうだ?これでも死にたいと思うか?」
「……思わない」
涙を目に浮かべながらそう呟いた。
それから俺は死という言葉を見る度に怒りを覚える様になった。
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「出ていけ!もう散々だ!」
「わかった」
俺は玄関のドアを開けると、裸足で出ていった。
もういい
小2の自分がその言葉の意味を知るのはもう少し後となるのだった。
その後どうなったのかは言うまでもない。
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「夢」
夢は夢さ
夢なのだから
気長に待とう
気長に努力しよう
これは夢さ
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「静死」
「アンタなんて私の子供じゃない!!!! 化け物よ化け物!」
今日は秘密基地で遊ぼう。
今日はきょうくんらと遊ぶ約束をしているんだ。
そして秘密基地
おーい、お前も上に来いよー
へへ、わかったぁ
僕はアガる
ばけ物め
やあきょうくん、元気してるかい?僕は最近腰が痛くてたまらないよ。
君の腰が欲しいくらいだ。
今日もたくさん会話した。
そんな目をして、溶けるよ?
今度は足かな
じゃあまた明日。
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「わからない」
この世の全てが理解出来ない。あいつの事も貴方の事も。全てがわからないし、不思議である。だけどそれは相手も同じ。本心ではびくびく震えてるし、ネガティブな事ばかり言っている。それは勿論自分もそうだ。だけどそれを他人に打ち明けた所で何ににもならない。「だから何?」で終わってしまう。結局は誰だって俺の事等どうでもいいのだ。皆自分事が大好きなのだ、相手の事を気にかけている暇なんて無い。
「だから何?」
そう言われても
「わからない」
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「どうでもいい」
ああ今は良い気分だ。誰が死んでも気にしない。自分が死んでも気にしない。
だから殺す。