……私はゆっくりと獲物に忍び寄る。
「目を覆い耳を塞いでわなわなと震える男の子ってやっぱりかわいいわね」
私の美声が怪異にだけ聴こえるように呟くと改めて獲物に殺意のこもった目線を向けた。外見と持ち物から推測すれば今宵も獲物は男子高校生だ。年齢は15か16歳。名前と血液型と趣味は知らない。
………………………男子高校生なんか所詮独りぼっちで泣いている子に気づいてあげようともせず現を抜かす生き物だから、詳細なんかどうでもいいわ

私はただ……


　　　　　　

「死から逃れたいあまり暗闇の中で萎縮震慄(いしゅくしんりつ)しているそこノあなた。屍は屍らしくお墓で眠りなさい
あなた、魂(こころ)がないわよ」

"クズを葬ってあげたい"だけだから。
誰とでも仲良くできる清廉潔白(せいれんけっぱく)な魂(こころ)も宿さない癖に人間を気取るクズは……四股(しこ)を引き裂いてやるに限るわ。
余談だけど私達怪異は世界にとって悪だからこそ、聖人君子(せいじんくんし)が好きなの。だからクズには容赦しないわ
「もう、ゆルしてください。これからは……これからは……クラスメイト全員に……話しかけますから」
　命を乞う声がした。幻聴ね。クラスメイトの孤独に気づきもしないクズの声なんか聞こえないもの。

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"クズを葬ってあげたい"だけだから。
誰とでも仲良くできる清廉潔白(せいれんけっぱく)な魂(こころ)も宿さない癖に人間を気取るクズは四股(しし)を引き裂いてやるに限るわ。余談だけど私達怪異は世界にとって悪だからこそ、聖人君子(せいじんくんし)が好き。でも、クズは嫌い。情け容赦なんかしない「もう、ゆルしてください。これからは……これからは……クラスメイト全員に……話しかけますから」
　命を乞う声がした。幻聴ね。クラスメイトの孤独に気づきもしないクズの声なんか聞こえないもの