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恍恍惚惚

ほら、顔面蒼白(がんめんそうはく)の男子高校生くんが振り子の真似事をしているわ。彼の下校時刻が不運にも逢魔が刻と重なってしまったのね。私は珍しくポーカーフェイスを崩して、口元に薄ら笑みを浮かべ、ゆっくりと獲物へ接近するわ。
「目を覆い耳を塞いでわなわなと震える男の子。やっぱりかわいい♥」
男子高校生くんを目前に私はこれまた珍しく恍恍惚惚(こうこうこつこつ)な声を発した。私だってたまには感情を表に出したいから。
さて、お馬鹿な貴方は私がこれから男子高校生くんに何をするつもりか、まだわからないようね。
ラッキーだと思いなさい。心臓の弱いヤツは察しただけで気絶するから。もし、貴方が賢明かつ心臓の強さに自信がないならここから先は読み飛ばすことをおすすめするわ








私は今日、あの男子高校生くんをこの世から消してあげるつもりなの。具体的には両手両足を情け容赦なく引きちぎるのね。高校生なんか所詮孤独に傷つく誰かに気づいてあげようともせず無意味な青春に現を抜かす身勝手な命よ。生きるに値しないわ。とにもかくにも貴方達愚劣で下等な人間の若者からすればこわ～い超常現象も私達怪異にとってはありふれた日常の一端に過ぎないということね。
「暗闇の中で萎縮震慄(いしゅくしんりつ)しているそこノあなた。屍は屍らしくお墓で眠りなさい 。あなた、魂(こころ)がないわよ」

私は告げた。今度は持ち主に捨てられたお人形さんのような声で。よくよく考えると私が彼を発見してからわずか2秒間で一気に男子高校生くんの顔が血の気を失っているわ。もっと絶望させなきゃ
「たべないでくださいたべないでくださいたべないでくださいタベナイデクダサイ」
いきなり支離滅裂なことを言われた。

　我、輝きを裁く者。戦神テュールの御名によって死せる戦士とならんことを我ガ真の姿に懸けて誓約する。

　神々に畏怖されし魔狼を右腕のみで封印。
　左腕に握りしめた剣は一振りで有象無象を切り払い、猛り狂う冥府の牙を錆にする。

我が刃が……総てを刻み剏めた……